極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました
仕事に慣れるほどに、周りが見えてくるほどに、どうしようもなく気づかされる。

たとえば、この議事録にわたしの発言が一つもないことに。

北川早苗さんと瀬尾香織さんは、ブランドの顔ともいうべきプレス業だ。
決められた予算の中で効率的にブランドのPRをするために、日夜まさしく駆け回っている。

早坂美奈さんは、VMD(ビジュアルマーチャンダイザー)という仕事をしている。
アパレル業界じゃないと耳慣れない役職だと思うけど、ようするに店舗づくりのスペシャリストだ。
店舗の空間デザインを企画担当している。

そしてわたし、宮原そよかが彼女たちのアシスタント。各々のスケジュールを調整したり、必要な資材を発注したり、こうして議事録を作成したり・・・

「ありがとう。そよかちゃんがいると助かる〜」
と優しくみんな言ってくれるけど。

“いると助かる” のと “必要不可欠” のあいだには、埋めようのない差があると思うのは、ひねくれすぎなのか。


子どもの頃から、ファッションがというか、おしゃれをすることが大好きだった。
ごく普通のサラリーマン家庭だったけど、一人娘だから新しい洋服は他の子よりも与えてもらっていたと思う。
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