木津音くんはずる賢い。
小鳥、目をつけられる。
「ねぇ、この前も俺のこと見てたよね??」

つり目がちな琥珀色の目が私をのぞき込む。


いきなり過ぎて、頭が整理できない。
まずは事の成り行きを説明したい。

______________


「今日は身体測定です。みんな急いで体操服に着替えるように!」

担任の高本先生が大きな声で呼びかける。

教室からはえー、とか、体重やだぁ、とか色々な声が響き出す。

4月の半ば。
高校2年生になった私はクラス替えで仲のいい友達と離れてしまった。

誰とも話すことなく着替え始める。

身長は測りたくない。
それが今1番強い気持ちだ。

背の順で後頭部を見たことがない。生まれてこの方。

伸びてるかな…。
伸びてるといいな。

憂鬱な気分を追い払って、更衣室から出た。

瞬間____________

ドンッ!!!!!


目の前が真っ暗になって、後ろへと弾き飛ばされた。

(いたぁッ.....)

当たったのはどうやら男子生徒みたいだ。
恥ずかしい。

そう自覚したら一気に顔が赤くなったのがわかった。

「すみませんっ!大丈夫でした...か.......」

顔を上げると、言葉を失うほど綺麗な琥珀色が視界いっぱいに広がった。

「...だいじょぶ?」

凛とした耳に残る声が廊下に響く。

そこに居たのは



木津音くんだった。
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