ネェ、オレヲアイシテ?Ⅰ~Belief or Hypocricy~



「いらっしゃいませー」



花屋に入ると、エプロン姿の女店員の社交辞令のような挨拶が聞こえてきた。





「……今日はどうするかな」





数多もの花の中で、
何がいいのかなんて俺にはわからない。




「お兄さん、何かお探しですか?」


店員が俺に近づいてきて、そっと声をかけてきた。



「……病院にいる大切な人に送る花を」





目覚めもしないと何処かで思っているのに毎日見舞いに行くのは、何でだろうか。




そして、気づきもしてくれないと分かっているのに花を送るのは、何でだろうか。






…………俺は結局、ほんの少しだけ信じているんだ。兄さんは必ず目を覚ますと。





もう意識を失ってから十年は経つというのに。




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