【短】どこまでも透明な水の底
くっ付いたり離れたり、忙しい恋は苦手だ。
相手の手の平で踊らされてる人形みたいな恋は苦しい。
だから、躊躇していた。
けれど、気付けば彼女を目で追っていて、気付いたら手放せなくなっていた。
好きになっていた。
……必要としていたんだ。
「りん。おいで…?」
「んもう…りゅうさんてば狡い…」
甘やかしているようで、実は何よりも甘やかされているんだ。
彼女にそうされていたいんだ。
彼女にそっと後ろから抱き締められると、涙が出てしまいそうになる。
愛しくて愛し過ぎて、不意を付いて軟な心が叫び出しそうになる。
「愛してる…?」
「愛してるよ…」
留まることを知らない世界の中で、キミと出逢った必然性…今はそれに縋って生きている。
外はまた雨。
切ないくらいに静かな雨が降っている。
こんな温度のない雨の日は心細くなって嫌だ。
だけど、今は……。
「りゅうさん…手、繋ごう?」
「……ん」
「1人じゃないよ。りゅうさんは1人じゃない…」
こうして、手を差し伸べてくれる彼女がいるから…。
いつまでも満たされることのなかった心の中を埋めることが出来るんだ。