【短】どこまでも透明な水の底
後から抱き締められると、鼓動が跳ねる。
まるで、水を得た魚のように生き生きと。
「成海…」
「りん、でしょ?」
「…りん」
俺達は、とても年の離れた恋愛をしている。
俺は今年で30代半ばを過ぎるし、相手…薐はまだ20歳になったばかり。
10以上できかないくらい年の離れたおじさんを相手にするなんて。
そう思って最初は一蹴していた彼女の視線。
でも、不意を付いて抱き留められた体に、耳を掠めた吐息に、俺の心は呼応してしまい…。
「愛してる?」
「愛してるよ…」
そんな、普段の俺には考えられないくらい甘い言葉を、何時の間にか交わすようになっていた。