藤堂さん家の複雑な家庭の事情
藍子の週末

ツイてない午後

どんよりとした雲が空に広がる6月の金曜の午後。


用事があって学校帰りにやって来た、学区外にある歓楽街。


「いやマジで。ブスばっかでシャレになんねェ。言う事だけは一丁前で可愛げもねェしよ。つーか、筋の通らねェ意見ばっか言ってきて、ムカついて仕方ねェんだよ。自己チューも大概にしろって話だよな。ブスのクセによ。可愛い奴なんか一人もいねェぞ? マジでブスばっか」

実は、結構早い段階で気付いてたりした。


「行く前はそれなりに期待してたのに、ブス率の高さにビビったっての。女子の入学条件がブスかデブなんじゃねェかと疑ったくらいだぞ? マジ半端ねェ」

時間を潰す為に入ったファミレスの、あたしの後ろのテーブル席に座ってる人が、今あたしの学校に教育実習で来てる実習生の井上《いのうえ》先生だって事。


「その上頭も悪ィんだぞ? 終わってんじゃん。あいつらの頭ん中クソが詰まってんじゃねェ?」

でも向こうはあたしの存在に気付いてなくて、もうかれこれ30分も一緒に来てる大学の友達らしき人達に生徒の愚痴を言い続けてる。


ここなら同じ学校の生徒は来ないだろうって、わざわざ値段が高めのファミレスに入ったのに、まさか教育実習生とカチ合うなんて思ってもみなかった。


当然向こうもそう思ってるからこそ、こんな風に愚痴を零してるんだろうけど、お陰でそろそろ店を出たいのに席を立てない状態で、聞きたくもない愚痴を聞いてなきゃいけない。
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