藤堂さん家の複雑な家庭の事情
冗談なのか本気なのか分からない事を、仕事終わりに家に来てた惣一郎の前で言われた。


今は琢の事しか考えられないし、男は当分いらないって言ってんのに、「お前はアバズレだからいつ男が欲しくなるか分かったもんじゃねえ」って、ふざけた事まで言いやがった。


結果、死闘とも言える激しい兄妹喧嘩の末、特に異議を唱えなかった惣一郎の「俺でよかったら」って一言で、気付けば付き合う事になってた。


当時まだホストだった兄が、同じくまだホストだった惣一郎を、あたしに宛がおうとした意味が分かったのは、それから数ヶ月経ってからの事。


兄はホストを辞め、借金まで作って自分の店を持ち、その店に惣一郎を引っ張った。


先が分からない店に引っ張ったり引っ張られたりするくらい、ふたりはお互いを信用してる仲らしい。


つまり兄は本当にあたしの事を思って、信用出来る相手を宛がいたかったようだ。
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