藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「踏んだ!?」

「で、でもそれは、お兄ちゃんが悪いんだよ! 床に置いとくから!」

「床になんか置いてねえよ! んなトコに置いとく訳ねえだろ!」

「置いてたよ! ベッドの足元にあったから、踏んじゃったんだもん!」

「俺はちゃんと机の上に――」

「あっ、それオレだ。翡翠君の腕時計で遊んで、その後ベッドの上に置いた」

「あんだと!?」

時々、例外がもう一人増える時もある。


テレビを見ながらこっちの話を聞いてたらしい琢は、顔半分をソファの背もたれで隠しながら、こっちを覗き見る。


「じゃあ、琢ちゃんがベッドの上に置いたのが床に落ちちゃったんだね」

「そう思う……」

兄に怒られると思ってる琢は、既に半泣きの状態。


「落ちちゃったんだから琢ちゃんは悪くないよ。琢ちゃんはちゃんとベッドの上に置いたんだし」

それに気付いた藍子は、すぐに琢を慰める。


そしてついでに。


「あたしも悪くないと思う。床に落ちちゃってたんだもん。運が悪かったってだけじゃないかな?」

自分の仕出かした事もなかった事にしようとする。
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