藤堂さん家の複雑な家庭の事情

一通りの家事が終わると昼近く。


午前中は時間が経つのが凄く早い。


藍子に作ったお弁当の残りや昨日の晩ご飯の残り物で簡単にお昼を済ませ、ようやくホッと息を吐けるのが1時頃。


それでも今日の晩ご飯を何にしようかと頭はしっかり動いてる。


あたしの1日は藤堂家の家事に費やされてると言っても過言じゃない。


琢が帰ってくる前に買い物に行こうか、それとも琢が帰って来てから一緒に買い物に行こうか、どっちでもいいような事を考えながらインスタントコーヒーを飲む。


お昼を食べながら点けてたテレビでは昼ドラが始まって、聞こえてきた大きな効果音に何となく目だけを向けた。


テレビの中では、何やら訳ありって感じの男女が薄暗い部屋の中で密会してる。


毎日ちゃんと見てる訳じゃないから話の筋は分からないけど、その男女に「何か」があるのはすぐに分かる。


そういうものは雰囲気で悟るものなのかもしれない。


テレビの中の男女の顔が近付いていく。


お互いの唇が触れ、切なげに抱き合う。


唇を離した二人は見つめ合い、言葉を交わそうと口を開く。
< 115 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop