藤堂さん家の複雑な家庭の事情
直後に近くにあった部屋のドアが勢いよく開き、更に勢いよく登場した、見るからに意地悪そうな女が「何してるのよ!!」と叫ぶ。


そのタイミングで、狙ったかのようにあたしの携帯が鳴ったから、びっくりして持ってた珈琲を零しそうになった。


息を吐き携帯を手に取ると、画面に表示されてる惣一郎の名前。


大体いつもこれくらいの時間に掛けてくる惣一郎は、起床してすぐに電話をしてきてるらしく、


『おはよ』

その声はいつも寝起きの嗄《しゃが》れた感じ。


「おはようも何も、もう昼だし」

『俺にとってはまだ朝だよ』

「あっ、そ」

『心実、買い物は?』

「まだ」

『翡翠起きた?』

「まだ。って、アレがこんなに早く起きる訳ないじゃん」

『だよなあ。んー、どうしよ』

「何が?」

『俺、今日遅番になったからさ』

「別にいいよ。遅番の度に会わなくても。惣一郎も他に色々やる事あんでしょ」

『いやいや、会ってよ。会いたいから。遅番の時くらいしか会えないし』
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