藤堂さん家の複雑な家庭の事情
磨かれたグラスはほんの少しの曇りもなくて、どれもキラキラ光ってる。


「うん。帰るに帰れなくて」

トワさんと知り合ってから7年くらい経つ。


だから、性別は違うし11歳も年が離れてるけど友達みたいな感覚で、全く気を遣わなくて済むから一緒にいて楽。


ただトワさんがあたしに対して同じような気持ちを持ってるかは疑わしい。


あたしとトワさんの関係は、一言で説明が出来ないくらいには複雑で、トワさんにとってあたしは多少なり気を遣わなきゃいけない相手だったりする。


でも。


「それで、結局明日はどうなったの?」

温厚な話し方は元々のものだから、特別あたしにだけって訳じゃない。


「どうって?」

「勉強見てやるって言われて、どうなったのかなって思って」

「見てもらう事になった」

「何でまた」

「んー、向こうがそうしたいのかなって思ったから」

「そうしたい?」

「うん。多分だけど、井上先生は聞かれた事をすっごく気にしてるんだと思うのね? 言われたらどうしようって焦ってたりもすると思うんだ」
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