藤堂さん家の複雑な家庭の事情
家族がそんな風なんだから当然あたしもそんな感じで、普通の女なら――何が普通なのかその定義は分からないけど――喜びそうな惣一郎の持て成しも、あたしは持て余す。


ただその「ディナー」は、持て余すってだけで嫌な訳じゃない。


他の男がやったなら、「気取ってんじゃねえよ」とか「勘違いしてんじゃねえよ」って思うかもしれないけど、惣一郎相手だとそういう感覚は湧いてこない。


気恥しいってだけ。


その気持ちを持て余す。


その内慣れれば何とも思わないものになるのかもしれない。


未だ慣れないって現実は確かにあるけど。


我が家にはない洒落たインテリアで統一されてる惣一郎の部屋は、ダイニングテーブルも何だか洒落てる。


そこに向かい合って座ったあたし達が、「ディナー」の後半にする会話は毎度同じ。


あたし達は、


「あっ、そうだ。心実。琢のランドセルの事だけど」

「ランドセル?」

一緒にいると大抵の場合、あたしの家族の話をする。


内容は違えど、必ず家族の話題になる。


「小学校に入る時、ランドセルいるだろ?」
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