藤堂さん家の複雑な家庭の事情
10年前、乗ってた車が高速道路の防御壁に突っ込み、父親が死んだ。
父親は助手席にいた。
運転席にいたのは知らない女の人。
事故当初、運転席にいた女の人と父親の関係を警察に聞かれたけど、あたし達家族は誰もその人を知らなかった。
名前を言われても分からなかったし、写真を見せられても分からなかった。
後《のち》に検証をした結果、事故は運転者の自殺行為と判明。
ブレーキ痕はどこにもなく、かなりのスピードで突っ込んでたらしい。
最後の最後まで父親と運転席の女の人の関係は分からないまま。
だけど何となく周りの雰囲気的に、無理心中って方向で話は収まった感じだった。
どうも女の人は心に病を持っていたらしい。
その女の人が惣一郎の「元」母親だと知ったのは1年ほど前になる。
惣一郎の寝室のクローゼットの中にある、アルバムを見てそれが分かった。
アルバムの最後のページに、まるで隠すように挟まれていた一枚の写真には、幼い惣一郎と母親の姿。