藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「へ?」

「あっ、変な意味じゃなくてね? 何て言うかその……井上先生が大学の友達に愚痴ってるの聞いてた時、何かショックだったのね?」

「そりゃそうだと思うよ。仮にも『先生』がバカだのブスだの言ってるんだから」

「あっ、違う。それは何とも思ってない」

「ええ!?」

「だってそんなもんだって思ってるから」

「そんなもんって……」

「でもそうでしょ? 表向きはいい顔してても、裏では散々悪口言ったり、罵ったりさ? それって別におかしい事じゃないっていうか、普通の事でしょ?」

「藍子ちゃんそれ、完璧に翡翠《ひすい》と俺らの所為だよね……」

「お兄ちゃんとかトワさん達の所為も何も、実際そういうもんでしょ?」

「確かに違うとは言えないけど、それは藍子ちゃんの年齢で悟る事じゃないっていうか、その年齢はまだ男に夢を見てた方が――って無理か。育った環境が悪かったね……」

「育った環境が悪いって思った事ないけど……」

「いやいや、そういう観念に関して完全にスレちゃってる辺り、俺らが藍子ちゃんの家に出入りしてたのが原因だよ」

「でも楽しかったよ? 毎朝いっぱい人がいて」

「店終わりの酒臭いホストばっかだったのに?」

「うん。みんな朝から遊んでくれたし、酔っ払って妙にテンション高くて、訳分かんない事言ってるの聞いてて面白かったし」

「小学生がそんなの見て面白いって思ってる時点で問題あると思うけど……」
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