藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「でもあたしが中学生になったくらいからトワさん以外はあんまり来なくなったね」

「それはまぁ、思春期の藍子ちゃんに気を遣ったんだけど、どうも手遅れだったみたいだね。人生の大半を経験したくらいにスレちゃって……」

「そんなにスレてないよ」

「いや、本当に責任感じるよ。仕事終わりの俺達が客の愚痴言ってるのを散々聞かせてきたんだもんな……」

「まぁ、ホストクラブには何があっても行かないって思ったのは確か」

「うん。行かない方がいい」

「後『金の切れ目が縁の切れ目』っていう諺《ことわざ》が現実にあるって確信出来た」

「……」

「お兄ちゃんは一時期、お客の顔が全部諭吉に見えるって言ってたよ?」

「あいつ何て事を……」

「だからね? お兄ちゃんとかトワさん達の所為っていうよりそのお陰で、今日の井上先生が言ってた事も何とも思わなかった。っていうか、まだ可愛い方だなくらいに思った」

「じゃあ、何がショックだった?」

「それが分かんないの。分かんないからもうちょっと井上先生と一緒にいたいなって思ったんだ。一緒にいれば分かるかもしれないから」

「んー、キャラが違ったとか?」

「キャラ?」

「学校じゃ優しい先生なのにそんな事言ってたからそのギャップにショックを受けたとか。ほら、藍子ちゃんは確かに俺らの愚痴を散々聞いてたけど、実際店での俺らって見た事なかったから、現実問題ギャップに耐え切れなかったんじゃない?」
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