藤堂さん家の複雑な家庭の事情

『どんな感じだ?』

耳に当てている携帯から聞こえてきた問いに、「んと」と言葉を発した琢は、ほんの少しだけ開いたドアの隙間から部屋の中を覗き見た。


視線の先には背中がある。


ドアのちょうど向かい側にある壁には腰丈窓があり、その窓に向かって机が置かれている。


今、その机に藍子が座り、藍子の部屋をこっそりと覗いてる琢からはその背中だけがはっきりと見える。


『どうなんだ?』

急くような二度目の問いに琢は携帯を握り直し、


「体クネクネさせながらブツブツ言ってる」

見聞きしている現状をありのまま、声を潜めて伝えた。


『ブツブツって何て言ってる?』

「分かんない、分かんないって」

『唸ってるか?』

「うん。『んー』って何回も言ってる」

『体のうねり具合はどうだ?』

「右にいったり左にいったりしてる感じ」

『第一段階に入ったか』

「うん」
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