藤堂さん家の複雑な家庭の事情
家庭教師
「おかえり、藍子ちゃん」
放課後、静かな図書館で自分なりに勉強してから家に帰ってきた藍子に、リビングで待ち構えていたトワ――本名惣一郎――は、にこやかに声を掛けた。
リビングのドアを開けた藍子は一瞬ポカンとしたものの、すぐに事態を把握して「あっ」といった表情を作る。
そしてソファに座る惣一郎にパタパタと駆け寄ると、
「トワさん、もしかしてまたお兄ちゃんがお願いしちゃった?」
申し訳さなそうな表情で問い掛けた。
藍子がテスト勉強を始めて2日目。
期末テストまでは後4日。
いくら藍子の頭が悪いからと言っても、藍子は現役の高校生。
金を積めばバカでも入れると有名な某私立高校に通っていたとしても習っている事は高校の勉強で、習った記憶がない翡翠や心実には教えてやりたいという気持ちがあっても、当然教える事は出来ない。
そんな理由から、藍子のテスト期間になると、外部の人間が家庭教師として投入される。
それは大抵、藍子が「分からない」「分からない」とブツブツ言い出す――藤堂家では「第一段階」と呼んでいる――状態になってから。
放課後、静かな図書館で自分なりに勉強してから家に帰ってきた藍子に、リビングで待ち構えていたトワ――本名惣一郎――は、にこやかに声を掛けた。
リビングのドアを開けた藍子は一瞬ポカンとしたものの、すぐに事態を把握して「あっ」といった表情を作る。
そしてソファに座る惣一郎にパタパタと駆け寄ると、
「トワさん、もしかしてまたお兄ちゃんがお願いしちゃった?」
申し訳さなそうな表情で問い掛けた。
藍子がテスト勉強を始めて2日目。
期末テストまでは後4日。
いくら藍子の頭が悪いからと言っても、藍子は現役の高校生。
金を積めばバカでも入れると有名な某私立高校に通っていたとしても習っている事は高校の勉強で、習った記憶がない翡翠や心実には教えてやりたいという気持ちがあっても、当然教える事は出来ない。
そんな理由から、藍子のテスト期間になると、外部の人間が家庭教師として投入される。
それは大抵、藍子が「分からない」「分からない」とブツブツ言い出す――藤堂家では「第一段階」と呼んでいる――状態になってから。