藤堂さん家の複雑な家庭の事情

「どこが分からない?」

藍子の部屋で勉強を始めてから10分。


数学の教科書とノートを見つめたまま、「分からない」と何度も言う藍子に、トワはようやく声を掛けた。


何でもかんでも教えるのではなく、基本的に分からない所を教えるというスタイルを貫くトワは、いつも藍子に暫く考えさせてから声を掛ける。


それは、何でもかんでも教えていては「考える力」がつかなくて、逆に藍子の為にならないというトワなりの気遣い。


なのだが。


「何で方程式に使うのはXとYなの? FとかHじゃダメなの?」

「……」

藍子の疑問は根本的に何かが違う。


「考える力」の使い道を間違えている。


「えっと……それ、重要?」

「重要っていうか、気になる。トワさんは気にならない?」

「俺は……うん。気にならない……かな」

「FとかHでもいいじゃんねぇ?」

「じゃ、じゃあ、とりあえずFとHにして問題解いてみたらどうかな?」

「何で?」
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