藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「え?」

「何でFとH?」

「……え?」

「FとHを使う理由って何?」

「何って、それは藍子ちゃんが……」

「そうじゃなくて、XとYもそんなんだけど、どうしてそれを使うのかが分かんなくて、だから何か全体的に分かんなくて、つまりFとHを使うにしたって何でか使うのか分かんないから結局分かんな――」

「方程式は丸暗記するしかないからね。はい、じゃあこの問題やってみて」

「……」

毎度、こんな調子である。


最終学歴が翡翠や心実よりも上だとしても、トワも人にきちんと教える事が出来るほど頭がいい訳ではない。


その上、頓珍漢《とんちんかん》な質問をしてくる藍子相手となると、普通に勉強を教えるよりも難しくなる。


「あたし、サインコサインタンジェントは覚えてるんだ。何に使う言葉だかは知らないけど」

「……うん。藍子ちゃん、とりあえずこの問題やってみようか」

「はーい」

それでもトワは根気よく、藍子のテスト勉強に付き合う。


読解力がなく、理解力に乏しい藍子が、問題の意味を把握出来ずにいても、根気よく教え続ける。
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