藤堂さん家の複雑な家庭の事情
藍子が遅いから心実が入れただとか、琢が心実と入りたがっただとか思ってるかもしれない。


もしかしたら琢と風呂に入る役目が自分にある事も忘れ、何も考えていないかもしれない。


藍子の思考は未知数で、家族もいまいち把握出来ない。


「トワさん、どうもありがとう」

トワに笑顔でお礼を言った藍子は、「お風呂入ってくる」とリビングから姿を消した。


時間も時間の所為で、既に心実の部屋で眠っている琢の姿はリビングになく、必然的にトワと心実の二人になる。


「時間あるなら珈琲でも飲んでく?」

そう言ってソファから立ち上がった心実に、トワは「いや」と小さく答えてゆっくりとソファに近付き、


「あんまり時間ないから」

言いながら、心実の細い顎を掴んで顔を近付けた。


抵抗しない心実の唇に触れ、トワは心実を深く抱き寄せる。


あんまり時間がないと言ったくせに、その手は心実の胸に触れる。


「時間、ないんでしょ」

「うん。だから、ちょっとだけ」

離れた唇から発せられた心実の言葉に答えたトワは、ソファに座って膝の上に心実を載せ、口許にほんのりと笑みを作り心実を見つめた。
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