藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「親父さん死んで10年か」

「うん」

「お母さんは? 藍子ちゃん連絡取ってる?」

「うん。たまにだけど。お母さん、あっちの家族と上手くやってるって。だから邪魔しちゃいけないと思ってあんまり連絡してない」

「気にする事ないよ。いくら新しい家族がいるって言っても、藍子ちゃんのお母さんには変わりないんだから」

「分かってるけどやっぱり……ね。――って、お母さんと連絡取ってる事お兄ちゃんに言わないでね? お兄ちゃん、あんまりいい顔しないから」

「ああ、そうか。分かった」

「それにしてもお兄ちゃん遅いね。何時に来るの?」

「あれ? 今日、約束してる?」

「してないけど、来るでしょ?」

「いや、支店に顔出すって言ってたから来ないかも?」

「支店って【Kingdom】?」

「最近あっちの売上悪くてね。様子見に行くって」

「ええ!? なら何でこっちにスーツ持って来いって言ったんだろう? 自分で行けばいいものをあたしにクリーニング取りに行かせたんだよ?」

「じゃあ、こっちも来るのかな?」

「っていうか、お兄ちゃんあっちにいる事多くない? 折角ホスト上がってこのお店持ったのにあっち行ってたら意味ないと思う。あっち行ったら普通にホストとして接客してるんでしょ?」

「藍子ちゃん、翡翠がホストするの嫌なの?」

「バカみたいに飲むから嫌。また入院する事になったら迷惑」
< 17 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop