藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「母ちゃん。このケーキ誰の?」
藍子が勉強の為に、トワと自室に入って2時間。
お茶を飲もうと冷蔵庫を開けた風呂上がりの琢は、小皿に載せられラップをされているイチゴのショートケーキを見つけた。
「それはお兄ちゃんの分」
「翡翠君のかあ」
リビングに入ってきた心実の言葉を反復する琢も母親と同じく甘い物が好きだったりする。
だから冷蔵庫にあるケーキが誰の物なのか8割方分かっていながら、聞けば食べさせてもらえるかもしれないという計画の元に聞いた。
そして案の定。
「食べたかったら、食べていいよ」
母親の心実の口から、期待していた言葉が発せられる。
「いいの?」
「いいよ」
「翡翠君怒らない?」
「別に怒んないわよ」
「本当に?」
そうは言うものの、既に琢の手はショートケーキが載っている小皿に伸びている。
「本当にいいの?」