藤堂さん家の複雑な家庭の事情
それは二階の一番奥の部屋。
疲れの所為で重く感じる足を運び、そろそろ制服に着替え終わっただろう藍子がいる部屋の前で足を止めた翡翠は、ドアを小さくノックした。
ただそれは形だけのノックであり、藍子の返事を待たずしてドアは開けられる。
そのタイミングで机の前にいた制服姿の藍子が振り返り、
「今ちょうど準備終わったとこ」
翡翠が聞くよりも先に答えを口にした。
「見せてみろ」
そう言って近付いた翡翠に、藍子は「はーい」と返事をして通学鞄を見せる。
鞄の中を覗き込もうとした矢先、藍子が「今日は自信あるよ」と得意げに言ったから、翡翠は「本当かよ」と小さく笑った。
琢の支度を手伝う翡翠のもう一つの意図は、幼稚園の甥っ子同様、高校生の妹の準備を手伝う事。
忘れ物をする事が多い藍子の朝の支度を手伝うのが、翡翠の日課になっている。
心実に言わせれば、「そうやってお兄ちゃんが手伝うから、藍子がひとりで用意出来なくなるんじゃん」という事らしいが、翡翠も好きでやってる部分があるだけに、手伝うのをやめようとは思わない。
むしろ藍子が何でもひとりで出来るようになると、少し寂しく思うような気もする。
疲れの所為で重く感じる足を運び、そろそろ制服に着替え終わっただろう藍子がいる部屋の前で足を止めた翡翠は、ドアを小さくノックした。
ただそれは形だけのノックであり、藍子の返事を待たずしてドアは開けられる。
そのタイミングで机の前にいた制服姿の藍子が振り返り、
「今ちょうど準備終わったとこ」
翡翠が聞くよりも先に答えを口にした。
「見せてみろ」
そう言って近付いた翡翠に、藍子は「はーい」と返事をして通学鞄を見せる。
鞄の中を覗き込もうとした矢先、藍子が「今日は自信あるよ」と得意げに言ったから、翡翠は「本当かよ」と小さく笑った。
琢の支度を手伝う翡翠のもう一つの意図は、幼稚園の甥っ子同様、高校生の妹の準備を手伝う事。
忘れ物をする事が多い藍子の朝の支度を手伝うのが、翡翠の日課になっている。
心実に言わせれば、「そうやってお兄ちゃんが手伝うから、藍子がひとりで用意出来なくなるんじゃん」という事らしいが、翡翠も好きでやってる部分があるだけに、手伝うのをやめようとは思わない。
むしろ藍子が何でもひとりで出来るようになると、少し寂しく思うような気もする。