藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「今日はいい天気になりそうだな」
朝の食卓。
誰も天気の話をしていないのに――むしろ全員が無言だったのに――翡翠は唐突にそう口にした。
シャワーを浴びた直後でまだ髪が濡れたままの翡翠は、前髪を全部後ろに流し、藍子をチラリと横目で見る。
当の藍子はまるで聞こえていないかのように無言のまま、モソモソと朝食を食べ続けていた。
「いい天気になりそうだな」
今度はさっきよりもゆっくりと言葉を吐き出した翡翠は、藍子の方に体を向けてガン見する。
それでも藍子は俯いたままモソモソと朝食を食べている。
「藍子」
「……」
「藍子ちゃん」
「……」
「藍子さん」
「……」
「なあ」
「……」
「聞いてるか?」
「……」