藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「うん。そうなの」

「……分かった」

返事をしながら翡翠はチラリと心実に視線を向けた。


向けた視線には「助けてくれ」という気持ちが込められている。


心実はその翡翠の気持ちを嫌ってほどに感じ取り、黙ってそれを受け取ると、「ねえ」と藍子に声を掛けた。


「藍子の言い分は分かるけどさ。ちょっと休憩したらどう? 昼間はあたしと買い物行って、夜に勉強すればいいんじゃない?」

「ううん。やめとく」

「でも休憩も必要でしょ。ほら、息抜きっての? 根詰めすぎると上手くいくもんもいかな――」

「明日、数学のテストあるから」

「――す……うがく……」

「うん」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……うん。それは勉強しなきゃだね」

「うん」
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