藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「藍子ちゃん、今日はドライブに行こうか」
帰宅した藍子に、これまで何人もの客を虜にしてきた優しい笑顔を向けたトワは、いつもよりも更に優しい声色で提案した。
当然この提案は、翡翠と心実の意思を受け継ぎされている。
どうにか藍子に気分転換をさせ、ストレスを軽減させたいという意思の下にある。
最終段階に入ってしまえば、どんなに勉強をしたところで、藍子の頭には全く入らないのだからと皆が皆思っている。
――ただ。
「でも勉強しなきゃ……」
それは本人を除いて。
トワの提案に首を横に振った藍子は朝よりも更に元気がない。
思っていた以上に今日のテストが出来なかったのか、午後の図書館の勉強が捗らなかったのか。それとも、その両方かもしれない。
幼稚園児の琢が見ても元気がない藍子に、トワは笑顔を継続したまま、「うん」と返事をする。
そして、
「今日は車で勉強しようと思って」