藤堂さん家の複雑な家庭の事情
甘い声でそう言うと、「だから今日はドライブに行こう」と、への字口の藍子に再度提案した。


「車で勉強?」

「うん。たまにはいいでしょ? 勉強する環境を変えるのも必要だよ」

「車で勉強出来る?」

「出来る、出来る。夜景を見に行って、そこで勉強する」

「夜景?」

「うん。いいスポットがあるんだ。壮観だよ」

「夜景……」

「行ってみたいでしょ?」

「……うん」

「じゃあ、ご飯食べたら出掛けよう」

「……うん」

「教科書とノートも持ってね」

「はーい」

そんなふたりの会話をキッチンで聞いていた心実は、途中何度も「いいから行ってきな!」と言い掛けたのを呑み込んだ。


この時期の藍子にはなるべく怒らないように心掛けている。


勉強以外のストレスを与えないように努力している。


好物ばかりの晩ご飯を食べた藍子は、トワとドライブに出掛けた。


夜景の見える高台で、実際藍子がしっかり勉強出来たのかは疑問である。
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