藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「うん。結構出来た」

姉の問いにやっぱり笑顔で答えた藍子は、目を離した隙に焦げ始めた肉を小皿に取り、


「だから補習は受けなくていいと思うんだ」

なんて事を、自信ありな感じを隠しきれていない表情で告げるから、翡翠と心実はチラリと目を合わせた。


もしも――という事がある。


テストの結果がいいに越した事はないし、自信があるのは結構だが、もしもという事がある。


自信を持っていればいるほど、その「もしも」が起こった時のダメージは大きい。


だから翡翠はコホンと咳払いをして、手元にあったウーロン茶を一口飲んでから、「それはよかった」と呟き、「でもな?」と続けた。


「でもな? もし補習を受ける事になっても、それは藍子が悪い訳じゃない。分かるな?」

「うん。頭打ったからでしょ?」

「ああ、そうだ。藍子は覚えてねえだろうけど、お前は小さい時にそれはそれは物凄い勢いで頭を打ったんだ。2、3日気絶するくらい、しこたま頭を打ったんだ」

「うん。その話は何回も聞いた」

「だからお前はそんなにバカになったんだ」

「だね」

「仕方ねえ事だ。あれだけ頭をぶつけたら誰でもバカになる」
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