藤堂さん家の複雑な家庭の事情
姉と甥
都心部から随分と離れた場所にある神有《しんゆう》町は、田畑なんかもある結構長閑《のどか》な所。
その町の3丁目。
トワさんが運転する白のセダンは、同じような造りの二階建の一軒家が並ぶ集合住宅地に入ってゆっくりとスピードを落とし静かに止まった。
助手席の窓から目の前の家に目を向けると、玄関の照明灯とリビングに当たる部屋の電気が点いてる。
テレビを見てるのか漏れてくる光が時折チカチカとする。
「トワさん、ありがとう」
運転席に一旦顔を向けてお礼を言うと、トワさんは「どういたしまして」とニコニコ笑って、
「スーツは俺から翡翠に渡しておくよ」
あたしがお願いするよりも先に言葉をくれる。
皆まで言わなくても分かってくれるところが好きだな――なんて思いながら、「お願いします」とドアを開けたあたしは、両足を外に出してから、ハッとして後ろに振り返った。
「そうだ、トワさん」
「ん?」
「お姉ちゃん呼んでこようか?」
「え?」
「折角来たんだし、顔だけでも見て帰ればいいんじゃないかなと思って」
その町の3丁目。
トワさんが運転する白のセダンは、同じような造りの二階建の一軒家が並ぶ集合住宅地に入ってゆっくりとスピードを落とし静かに止まった。
助手席の窓から目の前の家に目を向けると、玄関の照明灯とリビングに当たる部屋の電気が点いてる。
テレビを見てるのか漏れてくる光が時折チカチカとする。
「トワさん、ありがとう」
運転席に一旦顔を向けてお礼を言うと、トワさんは「どういたしまして」とニコニコ笑って、
「スーツは俺から翡翠に渡しておくよ」
あたしがお願いするよりも先に言葉をくれる。
皆まで言わなくても分かってくれるところが好きだな――なんて思いながら、「お願いします」とドアを開けたあたしは、両足を外に出してから、ハッとして後ろに振り返った。
「そうだ、トワさん」
「ん?」
「お姉ちゃん呼んでこようか?」
「え?」
「折角来たんだし、顔だけでも見て帰ればいいんじゃないかなと思って」