藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「あん?」
「やってんなら病院ブチ込むよ」
「あんだと?」
心実の怪訝な声に眉を顰《ひそ》めた翡翠は、「今更んなもんするか」と吐き捨てて珈琲を流し込む。
そして言い訳をするように、「寝不足で頭動いてねえんだよ」と付け加えると珈琲カップを持ったまま立ち上がり、疑いの視線を投げてくる心実に目を向けた。
「藍子、何時に帰る?」
「夕方って言ってたけど?」
「一日補習かよ」
「バカだからね」
「なら会えねえか」
「何? 今日、早く出んの?」
「【Kingdom】」
「あっちか。――って、寝るの?」
珈琲カップを手に持ったままリビングを出ていこうとする翡翠に声を掛けた心実は、
「いや」
それだけ言ってリビングを出ていった兄がやっぱり何かおかしいと思った。
ただそのおかしさが何なのか分からないから釈然としない気分で、それから2時間ほど部屋に籠《こ》もっていた翡翠が、シャワーを浴びて仕事に行く姿を釈然としないまま見送った。
「やってんなら病院ブチ込むよ」
「あんだと?」
心実の怪訝な声に眉を顰《ひそ》めた翡翠は、「今更んなもんするか」と吐き捨てて珈琲を流し込む。
そして言い訳をするように、「寝不足で頭動いてねえんだよ」と付け加えると珈琲カップを持ったまま立ち上がり、疑いの視線を投げてくる心実に目を向けた。
「藍子、何時に帰る?」
「夕方って言ってたけど?」
「一日補習かよ」
「バカだからね」
「なら会えねえか」
「何? 今日、早く出んの?」
「【Kingdom】」
「あっちか。――って、寝るの?」
珈琲カップを手に持ったままリビングを出ていこうとする翡翠に声を掛けた心実は、
「いや」
それだけ言ってリビングを出ていった兄がやっぱり何かおかしいと思った。
ただそのおかしさが何なのか分からないから釈然としない気分で、それから2時間ほど部屋に籠《こ》もっていた翡翠が、シャワーを浴びて仕事に行く姿を釈然としないまま見送った。