藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「ちょっとだけでもいいから胃に入れろよ」
「んー」
「弁当、手作りだぞ? 心実と藍子ちゃんの」
言いながら、トワが持っていた紙袋を差し出すと、翡翠は「藍子?」と笑ってそれを受け取った。
そして、どこか嬉しそうな表情で紙袋から弁当箱を取り出し蓋を開け、今度は声を出して笑い始めた。
「藍子、心実に無理矢理手伝わされたか」
ゲラゲラと笑いながら指で卵焼きを抓んだ翡翠は、ヒョイッと口の中に放り込み「苦《にげ》ぇ」と笑う。
それが藍子の作った物だという事は、コゲ具合からトワにも一目瞭然だった。
翡翠と藍子の間にある、背徳的な関係を当然トワは知っている。
それに対してトワが否定するような事を何も言わないのは、翡翠の気持ちを知っているから。
ただトワが知っているのは翡翠の気持ちの方だけで、藍子がどんな気持ちでいるのかは分からない。
藍子が翡翠をどう思い、どんなつもりで体の関係をもっているのか皆目見当もつかない。
それはトワだけでなく、翡翠にも分からないのだと、過去に翡翠本人が言っていた事がある。
でも翡翠は藍子に何も聞くつもりはないのだとも言い、知る必要はないのだとも言っていた。
「んー」
「弁当、手作りだぞ? 心実と藍子ちゃんの」
言いながら、トワが持っていた紙袋を差し出すと、翡翠は「藍子?」と笑ってそれを受け取った。
そして、どこか嬉しそうな表情で紙袋から弁当箱を取り出し蓋を開け、今度は声を出して笑い始めた。
「藍子、心実に無理矢理手伝わされたか」
ゲラゲラと笑いながら指で卵焼きを抓んだ翡翠は、ヒョイッと口の中に放り込み「苦《にげ》ぇ」と笑う。
それが藍子の作った物だという事は、コゲ具合からトワにも一目瞭然だった。
翡翠と藍子の間にある、背徳的な関係を当然トワは知っている。
それに対してトワが否定するような事を何も言わないのは、翡翠の気持ちを知っているから。
ただトワが知っているのは翡翠の気持ちの方だけで、藍子がどんな気持ちでいるのかは分からない。
藍子が翡翠をどう思い、どんなつもりで体の関係をもっているのか皆目見当もつかない。
それはトワだけでなく、翡翠にも分からないのだと、過去に翡翠本人が言っていた事がある。
でも翡翠は藍子に何も聞くつもりはないのだとも言い、知る必要はないのだとも言っていた。