藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「バカが揃って酔い潰れてる!」
呆《ほう》ける藍子を余所《よそ》に、心実はそう言いながらふたりを引っ張り起こそうとし、
「藍子、手ぇ貸しな!」
到底一人では無理だからと藍子を呼んだ。
呼ばれるままに藍子はパタパタと心実に近付き、酷くお酒の匂いがする兄の腕を掴むと、力いっぱい引っ張ってみた。
けれど、ぐったりとしてる大人の男を、藍子がそう簡単に起こせる訳もない。
だから藍子は翡翠に自力で起き上がってもらおうと、
「お兄ちゃ――わあ!」
お兄ちゃん起きて――と言おうとした矢先に、突然翡翠に足首を掴まれ、驚き勢いよく尻もちをついた。
かなり派手に尻もちをついた所為で廊下にはドスンと大きな音が響き、少し離れた物陰から様子を見ていた琢が「藍子、大丈夫か!?」と声を掛ける。
その間に、翡翠のもう片方の手が藍子の制服のスカートを掴み、藍子は立ち上がる事も出来ず、どうにもこうにも動けなくなってしまった。
「お姉ちゃん、助けて!」
「あんた何やってんの!」
全く役に立たない――むしろ邪魔になっている――藍子を、駆け寄ってきた琢と心実が引っ張り起こそうとする、てんやわんやの藤堂家の玄関先。
呆《ほう》ける藍子を余所《よそ》に、心実はそう言いながらふたりを引っ張り起こそうとし、
「藍子、手ぇ貸しな!」
到底一人では無理だからと藍子を呼んだ。
呼ばれるままに藍子はパタパタと心実に近付き、酷くお酒の匂いがする兄の腕を掴むと、力いっぱい引っ張ってみた。
けれど、ぐったりとしてる大人の男を、藍子がそう簡単に起こせる訳もない。
だから藍子は翡翠に自力で起き上がってもらおうと、
「お兄ちゃ――わあ!」
お兄ちゃん起きて――と言おうとした矢先に、突然翡翠に足首を掴まれ、驚き勢いよく尻もちをついた。
かなり派手に尻もちをついた所為で廊下にはドスンと大きな音が響き、少し離れた物陰から様子を見ていた琢が「藍子、大丈夫か!?」と声を掛ける。
その間に、翡翠のもう片方の手が藍子の制服のスカートを掴み、藍子は立ち上がる事も出来ず、どうにもこうにも動けなくなってしまった。
「お姉ちゃん、助けて!」
「あんた何やってんの!」
全く役に立たない――むしろ邪魔になっている――藍子を、駆け寄ってきた琢と心実が引っ張り起こそうとする、てんやわんやの藤堂家の玄関先。