藤堂さん家の複雑な家庭の事情

トワの目覚め

チョコレートの甘い匂いに目を覚ましたトワは、瞼を開いてすぐにビクリと体を震わせた。


起きて早々驚いた理由は、目の前にチョコレートを頬張る琢の顔があったから。


琢はトワの顔の近くにうつ伏せで寝転がり、至近距離でトワの顔をマジマジと見ていた。


「起きたのか? 惣一郎君、起きたのか?」

トワの目覚めにニコニコと笑う琢の口の周りには、これでもかというくらいチョコレートがついている。


それを見たトワは思わずブッと吹き出してしまい、琢は笑ったトワを見て、ニッとチョコレートがいっぱいくっ付いた歯を見せた。


「母ちゃんの作戦が失敗した」

「作戦?」

「うん。惣一郎君は『けっぺき』だから、嫌がらせの為にチョコレートいっぱい付けて惣一郎君の傍にいろって。でも失敗だね。全然嫌がんなかった」

「俺、潔癖じゃないよ」

「母ちゃんからしたら『けっぺき』なんだって。『けっぺき』って何なのか知らないけど」

そう笑った琢は、「母ちゃん呼んでくる」と立ち上がり、さっさと部屋を出ていく。


ひとりにされた部屋でゴロンと寝返りを打ったトワは、ここが自分がいつも藤堂家に泊まる時に寝ている部屋ではなく、心実と琢の部屋だと気付いた。


どうやってここまで来たのかいまいち記憶がない。
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