藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「ここまで」というのは心実と琢の部屋までという意味ではなく藤堂家にという意味で、昨日の事を思い返そうとしてみても記憶は定かではない。


【Kingdom】の一部で翡翠と一緒に仕事をして久々に浴びるほど酒を飲み、一部終わりに翡翠と【Crown】に行った。


その時点で既に記憶は曖昧で、【Kingdom】の客を何人か引き連れて【Crown】に行ったはずなのだが、誰を連れていったのかは覚えていない。


そこからまた浴びるほど酒を飲んだ気がする。


ブツブツと途切れる記憶は消えている部分の方が多く、トワが覚えているのはテキーラを何杯もショットで飲んでいる辺りくらい。


最後の方の記憶はほぼないに等しく、そういえば翡翠とタクシーに乗った気がしないでもないという程度。


そして辛うじて、藤堂家の階段を心実に引っ張られながら上がった記憶がある――ような、ないような。


こうして記憶がなくなるまで酒を飲んだのは久しぶりだとトワは苦笑を漏らした。


無茶な飲み方をしたと自分の事ながらに思う。


あの感じをここ数日毎日翡翠がやっていたのかと思うと恐ろしい気もするが、それもこれも全て終わった。


そう思うと自然と体の力が抜け、ホッとした溜息が自然と口から零れた。
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