藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「もうこんな心配は二度とさせない」
トワのその言葉に、心実は何も言わずにフンッと鼻を鳴らしてプイッとそっぽを向いた。
その横顔には不機嫌さだけではなく、心配事から解放された安堵感もある。
それを見たトワは無性に心実を抱き締めたくなり、持っていたコップを床に置くと徐に心実に手を伸ばした。
「な――」
「ちょっとだけ抱き締めさせて」
拒もうとした心実を言葉と腕の力で制し、トワはその細い体を自分の胸に引き寄せた。
心実の体温がほんの少し上昇する。
それを感じ取ったトワは心実の耳元に唇を近付け、「旅行、俺も一緒に行くから」と、優しい声で囁いた。
トワの囁きに「当たり前でしょ」と心実は答える。
そんな心実の声を聞きながら微笑んだトワは、この旅行の話を翡翠から聞いた時の事を思い出した。
トワには心実に言っていない事がある。
翡翠は旅行の話をした時、来年には藍子が高校3年になって就職活動で忙しくなるかもしれないという事と、琢が小学生になって家族より友達と遊ぶ事を優先するようになるかもしれないという事以外にもうひとつ言った。
トワのその言葉に、心実は何も言わずにフンッと鼻を鳴らしてプイッとそっぽを向いた。
その横顔には不機嫌さだけではなく、心配事から解放された安堵感もある。
それを見たトワは無性に心実を抱き締めたくなり、持っていたコップを床に置くと徐に心実に手を伸ばした。
「な――」
「ちょっとだけ抱き締めさせて」
拒もうとした心実を言葉と腕の力で制し、トワはその細い体を自分の胸に引き寄せた。
心実の体温がほんの少し上昇する。
それを感じ取ったトワは心実の耳元に唇を近付け、「旅行、俺も一緒に行くから」と、優しい声で囁いた。
トワの囁きに「当たり前でしょ」と心実は答える。
そんな心実の声を聞きながら微笑んだトワは、この旅行の話を翡翠から聞いた時の事を思い出した。
トワには心実に言っていない事がある。
翡翠は旅行の話をした時、来年には藍子が高校3年になって就職活動で忙しくなるかもしれないという事と、琢が小学生になって家族より友達と遊ぶ事を優先するようになるかもしれないという事以外にもうひとつ言った。