藤堂さん家の複雑な家庭の事情
階段の途中辺りからしてきたパンの焼けたいい匂いは、リビングの前まで行くと濃くなって、ドアを開けるとジュージューと卵を焼いてる音がした。


リビングの奥にあるキッチンにはまだ眠そうなお姉ちゃんがいて、お姉ちゃんはあたし達がリビングに入った事に気付くと、あたしを一瞥する。


そして。


「お兄ちゃん、昨日ベロベロに酔って帰って来れなかったって」

言うだけ言って、すぐに手元のフライパンに視線を戻した。


「また?」

「そう。また」

「じゃあ、店で寝てるの?」

「寝てるっつーか、倒れてる感じだって」

「何でそんなに飲むんだろ」

「さあね。バカなんじゃない?」

「帰れないってお兄ちゃんから連絡あったの?」

「ううん。惣一郎から」

「トワさん?」

「そう」

「電話掛かってきたの?」

「まあ、電話もきた」

「うん?」

「電話掛かってきて、直接来た」
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