藤堂さん家の複雑な家庭の事情
少しの間ボーッとしてたお姉ちゃんは、不意に「そういえば」って言いながらあたしに目を向けて、


「あんた今日、大学生と会うんだって?」

トワさんからどういう聞き方をしたのか知らないけど、まるでデートでもするような言い方をしてくる。


この感じからしてお兄ちゃんも同じように思ってるんだろうと、お兄ちゃんに聞くまでもなく悟ってしまった。


「大学生じゃなくて、教育実習の先生。会うって言っても図書館でだよ?」

「教育実習の先生って、つまりは大学生でしょ」

「そうだけど……。でも来るかどうか分かんないし」

「来るでしょ」

「トワさんもそう言ってたけど、分かんないよ」

「惣一郎が来るって言うなら来るでしょ」

「来たら来たで困るんだけどな……」

「何で?」

「トワさんに何て聞いた? あたしがファミレスでその先生の愚痴を聞いちゃった事も聞いた?」

「聞いた」

「って事はさ? もし来たとしたら、それだけ罪悪感っていうか、後ろめたさがあるって事でしょ? あたし何とも思ってないし、誰かに言うつもりもないから、そこまでされても困るんだよね」

「別にいいじゃん。勉強教えてくれるって言ってんでしょ? あんたバカなんだから教えてもらいな」

「来たら、ね」
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