藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「は? 何で?」

「そんなにお金持って来てないし」

「はあ?」

「井上先生に奢るのがいっぱいいっぱいの気がするから、ドリンクバーでいいです」

「お前、バカじゃねェの」

「はあ、そうですけど……」

「俺がマジで高校生に奢らせると思ってんのかよ」

「はい」

「うっぜェ! このバカうっぜェ!」

「はあ……」

「高校生に奢らせたりしねェよ。奢ってやるから好きなもん食え」

「じゃあ、遠慮なく」

「ああ」

「ステーキセット」

「……お前、中々の兵《つわもの》だな」

呆れたような感心したような、何とも言えない声を出した井上先生は、すぐに店員さんを呼ぶとステーキセットとドリンクバーをふたつずつ頼んだ。
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