藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「教師なんかになるつもりねェよ。生意気なガキの相手なんかやってられっか」

吐き捨てるように言ってた。


その後、「んでも、お前は生意気じゃねェな」と付け加えて笑ったところを見ると、心底「生意気なガキ」が嫌いじゃないように思えた。



会話に花が咲いたっていうほど大盛り上がりではなかったけど、楽しい時間を過ごしたと思う。


案外お喋りな井上先生の話のネタは尽きる事がなくて、あたしも何度も笑わされた。


だから気付いた時には思ってたよりも随分と時間が経っていて、


「なあ。お前の携帯さっきからチカチカチカチカ光ってっけど、電話掛かってきてんじゃねェの?」

井上先生に、テーブルに置いてた携帯を指差し言われて血の気が引いた。


慌てて手に取った携帯に表示されてる時間は20時17分。


画面には着信有りのマークと、新着メール有りのマーク。


眩暈すら起こしそうな状況に、恐る恐る着信履歴を開いてみると、お姉ちゃんから鬼のように電話が掛かってきてた。


怖すぎてメールを開ける事が出来ない。


図書館を出てからマナーモードを解除し忘れてた自分を呪いたくなる。
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