藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「今の何だ?」

そんなあたしに井上先生から掛けられる問いは、当然と言えば当然のもの。


漏れてた声が聞こえてただけじゃ、ただあたしが誰かに絡まれると思っても仕方ない。


井上先生も例外ではなく、


「お前、誰かにインネンつけられてんのか?」

驚いた表情で聞いてきた。


「誰かにっていうか、今のお姉ちゃんで……」

「出戻りの?」

「はあ」

「え? お前の姉貴?」

「そうです」

「姉貴が何であんなにキレてんの?」

「時間を過ぎてるから……」

「時間? 時間って何? 門限?」

「まあ、門限といえば門限……ですね」

「え? 門限過ぎただけであんなにブチギレてんの? つーか、まだ9時前だぞ?」

「帰るのが遅い上に、何度掛けても携帯に出なかったからあれだけ怒ってるって感じで……」

「いやいや、待て待て。それにしてもキレすぎだろ。つか、門限過ぎたくらいで何度も電話してくんのもどうだって話じゃね? お前の家、厳しいのか?」
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