藤堂さん家の複雑な家庭の事情
驚きの後に出てきた焦りの表情が、わざわざ本人に聞かなくても全てを物語ってる。


だからどうにも居た堪れなくなった。


でも何をどうすればいいのか分からなかった。


何も聞いてませんって振りをするには無理がありすぎる。


聞いてた事が前提なら、どんな態度に出ればいいのか分からない。


分からないから合った目を逸らす事も出来ないで、ただただ黙って見つめる事しか出来ず――。


「何年?」

唐突に井上先生に質問されて、反射的に「2年です」と小さく答えた。


焦りが全くなくなったって事はないみたいだけど、最初に受けた衝撃はある程度消えたらしい井上先生は、あたしの返事に「ふーん」と答えて、何故だかあたしの正面のソファに座る。


何で座るの!?って思うあたしの気持ちなんて総無視で、そこにどっしりと腰掛けた井上先生は、テーブルの上に散らばる教科書とあたしの顔を交互に見た。


後ろの席がザワッとする。


「井上、何やってんの?」

なんて声も聞こえてくる。


だけど井上先生は目だけでそれを制して、またすぐにあたしに向き直った。
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