藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「何してんの?」

少し間を開けて口を開いた井上先生の声は微妙に威圧的で。


「え、えっと、週明けに小テストがあるから勉強を……」

あたしは何にも悪い事をしてないのに、モゴモゴと答えてしまう。


「家ですりゃいいじゃん」

愚痴を聞かれた事で開き直った部分があるのか、井上先生の言い方は横柄《おうへい》な感じも含まれてて。


「い、家ではゆっくり出来ないから……」

聞こえただけであたしは何にも悪くないのに委縮してしまう。


「何で?」

「え?」

「何で家じゃゆっくり出来ねぇの?」

「そ、それはその、甥っ子がいて騒がしいから……」

「甥っ子?」

「はい。お姉ちゃんの子供が……」

「何で姉ちゃんの子供がいんの?」

「え、えっと……」

「シングルマザー?」

「というか、お姉ちゃん離婚して戻って来てて……」

「出戻り?」
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