藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「遊んでないよ。勉強見てもらっただけ」

「ふーん」

「本当だよ」

「もういいからキスしろって」

「はーい」

「あー、マジでお前といる時だけがホッとする」

笑った口許を近付けて、チュッと音を立ててキスをした後、お兄ちゃんは枕元に手を伸ばすと、携帯電話を掴む。


そして二つ折りの携帯をパカッと片手で開いて目を細め、


「4時半か。琢が起こしに来るまで結構寝れるな」

時間を見てからまた枕元に携帯を置いた。


「あっ、そうだ。お姉ちゃんが服着て寝ててって言ってたよ」

「やだよ、面倒臭え」

「琢ちゃんの教育上よろしくないからって言ってた」

「これがうちの教育方針だ。この家じゃ俺が絶対だから、これでいい」

「じゃあ、あたしだけでも服着とく」

「無理」

「だってお姉ちゃんに怒られる」

「怒らせねぇからこのまま寝てろ」

「またゲンコツされたらどうしよう」

「させねえよ」
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