藤堂さん家の複雑な家庭の事情
口籠る。


ソファの背もたれに置かれている手の指先が、落ち着きなくコリコリとソファのレザーを掻く。


逸らした目もやけに瞬きが多く、これでは自分が犯人ですと白状してるようなものだ。


だが翡翠は、敢えて強く出たりはしない。


犯人はお前だろう!と思っていても――それは最初から分かっていたんだが――とりあえずそれを言う事はない。


頭ごなしに怒っては、欲しい結果が得られない事を翡翠はちゃんと分かっている。


だから。


「財布の金が減ってる」

藍子がそれを望むならと、順を追って説明する。


「へ、減ってるっていつからと比べて?」

「今朝」

「け、今朝数えたの!? な、何で!? いつもそんな事しないのに――」

「たまたま」

「……」

「……」

「い、いくら入ってたの?」

「5万」
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