藤堂さん家の複雑な家庭の事情
「そ、それがいくらになってるの?」

「4万1千」

「じゃ、じゃあ、数え間違ったんじゃない? 元々4万1千円だったのに5万円と間違えてたとかじゃないかな?」

「ほう」

藍子は掴まれる尻尾丸出しである。


翡翠は5万とは言っても、それが全て万札だったとは言っていない。


今ある4万1千円も、万札が何枚で千円札が何枚であるのかも言っていない。


今朝と今の枚数が同じでなければ藍子の言っている「数え間違え」という事もないから、やはり犯人は藍子しかいない。


ここまで来ると藍子に隠すつもりはあるのかすら疑わしいが、本人は本気で誤魔化してるつもりだったりする。


だから尚更厄介だと、翡翠は心の中で溜息を漏らした。


「俺が金を数え間違えると思うか?」

「……」

「俺は数え間違ってない」

「……」

「確かに今朝は5万あった」

「……」

「お天道様に誓って、今朝は5万あった」

「……」
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