吐露するキズ跡
そうなんだよ。

もう一歩踏み込んで、覗き込もうとしたら、垂れ流しの血が見えて…

うん、そうそう、こういう感じ…

羽の胸元を見て、今、感じたことが、実際に、本当に、目の前に見えていることに気付く。

羽は、一生懸命に、それを覆い隠そうとしていて。

そうすると、羽の手のひらはどんどん血まみれになっていって…

あたしは自分の頭から血の気が引いて、意識が遠のくのを感じた。

「ツカサ!?」

ほんの一瞬だったと思う。

羽に支えられてて、道行く人に、ちらりと視線を送られながら、立ち直る。

「大丈夫?」

恐る恐る、羽の顔を見る。

血の跡はない。

少しづつ、視線を下げて、胸のあたりまで確認する。

もう、変なものは見えない。

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