吐露するキズ跡
思わず隣に腰掛けて、傷口に触れる。

「…不便だね、視えると。視えなかったら、オレなんて放っておけたのに」

キズに触れてる指を払われて、両手に引き寄せられる。

キズにまともにぶつかりそうになって、ちょっと抵抗する。

そのせいで、傷口はパカッと血を吐いた。

「…違うんだって。…これ、痛くないんだよね」

自分に言い聞かせて、抵抗するのをやめる。

本物のキズだったら、あたしの身体も血まみれになってるな。

「…ほら、キズって便利。ツカサが優しいのをいくらでも利用できちゃうね」

声が、降ってくる。

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