君と奏でる、永遠のメロディー
「よし!」

彼女が一際大きな声で言う。

「何?」

「これとこれが良いと思うんだけど、どっちがいいかなぁ?」

両手に持ったハンガーを交互に上げて、首を傾げる。

右手には、ベージュのロングコート。

左手には、白くて襟にモフモフの付いたコート。

「えっと…」

迷う。

こういう時、どちらと答えるのが正解なのだろう。

昔、母にも同じことを訊かれて、『こっち!』と言ったら、『あんた何にも分かってないわね』と怒られたことを思い出す。

そう、こういう場合、もう自分の中で決めてから訊いているのだ。

絶対に外したくない。

「僕は、そっちの白いのがいいと思うけど…」

彼女はフワッと柔らかな印象だから、よく似合うのではないか、と感じた。

「だよね、だよね!」

その言葉に、ホッと胸を撫で下ろした。
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