白と黒と時々ピンク。
僕は机に散乱している求人票にため息をついた。

担任が良かれと思い資料をくれたのだ。

まるで行き場を失った求人票は役目も果たせずゴミ箱へと捨てられた。

机の二段目の引き出しには鍵がついている。

親に隠し事をするのはダメな事だと教えられたが、おそらく机メーカーは親目線ではなく子供目線で机を作っているのだろう。

ベッドの下から鍵を取り出し引き出しを開けた。

中から灰皿とタバコを取り出し窓を開ける。

それと同時に流行っていたお香に火をつけた。

まったくお香には興味はなかったが、タバコのカモフラージュには最適だった。

『ふぅー』とため息交じりに煙を吐き出した。

煙はフワフワと新たな世界に旅立つように窓に吸い込まれていった。

『知り合いの会社に行くのは決まったのか?』

担任の言葉が脳裏に浮かんだ。

担任が何度も同じ質問を繰り返すのは僕のハッキリしない態度にあった。

それは知り合いの仕事内容だ。

なにやらよく分からない機械を蛇口に取り付けると水道水が健康に良い水になるらしい。

稼いでいる人は20代で100万を超えると話していた。

僕は軽はずみに『いいですねー!就職が決まらなかったら使ってくださいね!』と言ったことを後悔していた。


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