白と黒と時々ピンク。
何日ぶりだろう。

目覚ましをセットせずに眠りについたのは。

僕は定位置に置いた携帯電話に手を伸ばした。
悲しい事に時刻は午前6:00だった。

以前、遅刻を犯した同期の社員が血祭りにあげられて以来、僕の体は午前6:00に反応するようになった。

平日休みということもありリビングには異様な静けさがあった。

愛犬のチャッピーが不思議そうに僕に視線を送る。

マーブル調の模様が少しくたびれたのを見て時の早さに気付かされた。

小学生の時に赤ちゃんで貰われてきたチャッピーがすっかり成犬だった。

僕はポットのスイッチを入れてコーヒーを淹れた。

あれほど欲していた休みを手にしても何もすることが見つからない現実に無性な寂しさを感じた。

そして、ただいたずらに時間を消費しているとテーブルの携帯がなった。

僕はドキッとしながら携帯のディスプレイを覗き込んだ。

そこには“小池一馬”と表示されていた。

会社関係だと思っていた僕は安堵した。

小池一馬は中学の頃からよく遊ぶナンパ仲間だ。

僕は人指し指で通話とスピーカーのボタンを押した。

『休みー?』

これでもかと内容が端折られた第一声がスピーカーから聞こえてきた。

いつも仕事をしていた僕に一馬はダメ元といった感じで電話をかけたのだろう。

僕は期待に応えず『休みだよ!』と言った。

そして二杯目のコーヒーを口に運ぶ。

受話器の向こうでは半分あきらめていた一馬が『だよなー、、、え?休み?』と一人コントを繰り広げていた。

『休みだよ!どうして?』


『今日、合コンなんだけど来れる?いや来て!』

一馬の誘いはいつも半強制的だった。

自分の思い通りにならないとヒステリーを起こすことが多々あった。

出会ってすぐの頃、あまりにもヒステリーな一馬に『兄弟は?』と聞いたことがあった。

『いないよ!驚いた?』

そう言う一馬に僕はあまりにも典型的な一人っ子だと驚かされた。
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